1996年7月にクローン技術から生まれた世界初の哺乳類、羊のドリーは天寿を全うする前に安楽死させられました。
この報道から、クローンは健康に異常をきたすと言うイメージが浸透したように思いますが、実際はどうなのでしょうか。
ドリーが安楽死させられた要因や、その後の研究、最近の研究はどうなのかをまとめました。

そもそもクローンとは
クローンはコピーしたい個体の体細胞から核を取り出し、核を取り出した未受精卵にその核を移植したものを代理母に移植し出産させることで出来ます。
体細胞(生物の身体全て)は元は同じ1つの受精卵が分裂して出来ます。
そのため、どの細胞からでも同じ遺伝子がとれ、同じ個体がコピーとして生まれます。
羊のドリーは何故、安楽死させられたのか
通常、羊の寿命は10~12歳程度と言われていますが、クローン羊のドリーは肺疾患を患ったため、6年半で安楽死させられ短い生涯を終えました。
また、羊にしては早い段階で変形性関節炎を患っていたことも報道され、クローン技術は老化を早める、寿命が短くなると考えられていました。
クローン羊の研究は続いていた

その後も、ドリーと同じ胚を使用して新たな羊たちがクローンとしてつくられ研究は続けられていました。
その羊たちは8~10年間、正常に年齢を重ね健康であると報告されています。
ドリーの健康面で問題視された変形性関節炎は殆どの羊に1~2か所軽度の徴候がみられているそうですが、身体が不自由になる程ではなく治療も必要ない状態と報告されていました。
関節炎のことは気になりますが、同年代の羊と比べると珍しいことではないそうです。
このことからクローン技術と短命は関係がないことが証明されたそうです。
近年のクローン技術

近年では人間に近い遺伝子を持つ霊長類のクローンも作られるようになっています。
2019年1月24日に中国科学院神経科学研究所のチームが世界初のゲノム編集とクローン技術を併用したサルを誕生させています。
この実験ではゲノム編集で体内時計の調節に関わる遺伝子を破壊したサルのクローンからは体内時計に関わる遺伝子を持たないクローンが誕生すること。
また、そのことが精神疾患、糖尿病、循環器系疾患を患うと言う報告がされていました。
この研究では目的の曖昧さや、人に近い霊長類のクローンを作ったことから世界各国で避難の声も上がったようです。
クローン技術は人間に使われるのか
2001年にクローン技術規制法が施行され、クローン人間は懲役刑をもって禁止されています。
しかし、イタリアのセベリノ・アンティリノ医師が2002年11月に「来年1月にクローン・べビーが誕生する」と報告したそうです。
その後、報告は何もなかったようです。
この時代は人間に近い霊長類のクローン作りは成功しておらず、真意は闇の中です。
クローン人間を題材にした作品
クローン人間を題材にした作品はクローン技術が出来て直ぐの20年近く前に作られていました。
遺伝子を英語でgene(ジーン)と言いますが、それとは別に、人々が生きる中で受け継がれる伝統や思想、そこから生まれる悩みや希望なども含めてmeme(ミーム)と言います。
この作品の主人公の姿は、クローン技術の倫理、生きる意味を鋭く突いていると思います。
まとめ
- ドリーは肺疾患にかかり平均寿命より短い生涯を安楽死で終えた
- 同じ胚で作られたクローン羊たちは健康でありクローンが短命の原因ではなかった
- 近年は人間に近い霊長類のクローンが誕生している
- クローン人間は法律上は禁止されている
クローンの技術は今後も発展し、人々の生活に定着していくと思います。
技術の発達と同時に倫理観の統一と浸透が必要になりそうです。
